マグロ問題をめぐって まぐろとマグロ

先日,親戚が亡くなったため帰省。
通夜の時に寿司を食べながら「これからはマグロが食べられなくなるかもしれないし」といった話を聞く。
以前より耳にしていた話ではあったけど,そんな日常的に語られるニュースなのかな?とその時は思った。


後に家へ帰ってネットで見ると,主要新聞紙がのきなみ社説で取り上げているではないか。


産経主張11/26 マグロ問題 食の安全保障考える契機
読売社説11/28 マグロ漁規制 乱獲のつけが回った漁獲枠削減
朝日社説11/28 マグロ 消費国こそ資源保護を
東京社説11/28 クロマグロ 大量消費は許されない
日経社説11/29 マグロ、資源回復にがまんも必要
毎日社説11/29 マグロの保存 持続可能な漁を訴え続けよう


これじゃ確かに,みんなの話題にはなるよな。
日本の漁業者による報告が正確じゃなかった(報告の何倍も獲ってた)ため,ミナミマグロの割り当てが減らされたことがちゃんと書いてないのが気になるけれど*1

しかし,漁業関連の話題でこんな状況になるのは,すごく久しぶりなのではなかろうか。
捕鯨問題以来のことだったり。


それはともかく,面白く思ったのは新聞中での“まぐろ”の表記がいろいろであること。
「まぐろ」と「マグロ」の2とおり。
さらに(社説ではないけど)日経新聞の春秋(11/28付)では,

世界に広がる鮨ブームもあって主役のは資源管理が心配されるグローバルな食材になりつつある。
▼その最高級種といわれるクロマグロの漁獲枠について、大西洋まぐろ類保存国際委員会が地中海と大西洋で全体の2割をこの4年間で削減することに合意した。

と漢字の「鮪」を含めて3とおりが登場。


もちろんこの表記の違いにちゃんと背景(ルール)があるのはわかる。
文化的には「まぐろ」または「鮪」であろう。
新聞は難しい(と判定された)漢字は使わないらしいので,当然,社説中では「まぐろ」が使われる。
春秋で「鮪」が使われているのは,先の文章の先に志賀直哉小僧の神様』からの一節

そろそろお前の好きな鮪(まぐろ)の脂身が食べられる頃だネ

が引用されているから,それに引きずられてに違いない。


学術的には「マグロ」かな。
生物の名前はカタカナで書くことは,学術書や学術論文における慣用なのであった。
新聞でも具体的な生物名をあげる時はそれを準用しているようだ。
余談だけど,なぜそうなったかという理由を調べるとちょっと面白い(→Wikipedia和名の由来」)。


で,興味深いのは「大西洋まぐろ類保存国際委員会」。


これは?


「まぐろ類」は具体的な生物名ではないのか,などとも思えるが,他にこういうのもある。
毎日社説より

クロマグロに次ぐ高級魚のミナミマグロは10月に「みなみまぐろ保存委員会」が漁獲枠を削減した。

どうやら水産庁→例)が委員会名にひらがなを使っているからのようだ。
どちらが先なのかわからないが,外務省も(→例)。


ではちゃんとしたルールがあるのかというと,外務省の政策:「マグロ漁業」より

現在、全世界では約427万トンのまぐろ類が漁獲されており、そのうち日本は、約60万トンを漁獲し(うち約10万トンを輸出)、約41万トンを輸入しています。
 マグロ類等の高度回遊性魚類資源は、その生息水域が広範であることから、


えっとダメダメなんだけど(笑)。


僕も誤字脱字は多いので人のことは言えないけど,公式文書なんだから...

*1:ペナルティというよりも,今まで獲りすぎていた分を減らされたとのことらしい。業者としては存続に関わる問題でもあるので,同情はするけれど。まあ仕方がないか。0にされてしまうわけにはいかないし。