交通事故を起こす意外な要因は“星座”?
「交通事故を起こす意外な要因は……」という記事が,ウェブ上の一部で不評をかっているようです。
「星座」は交通事故を引き起こす重要な要因だ――カナダの保険見積もりサービスInsuranceHotline.comが12月13日、このような調査結果を発表した。同社が集めた過去6年間の北米の交通データを基に、10万人のドライバーについて違反チケットの数や起こした事故の件数などを調べたところ、交通事故の予測において、ドライバーの年齢よりも生まれ月の方がずっと重要であることが示されたという。
「その結果、特定の星座のドライバーがより違反チケットをもらう傾向があることが分かった。またある星座のドライバーは事故を起こすよう運命付けられているようだった」と同社の社長リー・ロマノフ氏は述べている。
確かに「事故を起こすよう運命付けられているようだった」などと言っているあたり,おいおい!と突っ込まれるのはしょうがないのですが。
これに対する奥一穂さん・徳保隆夫さん他の指摘はなかなか鋭いと思います。
というか,ちょっと先を越されたなという感じですか,今さらですが(笑)。
いちおうマジレスしておくと、交通事故の話もスポーツ選手の話と同様、早生まれ遅生まれの性格差が原因とも考えられるんじゃないかと思います。というか、そう思ったから、上のエントリを書いたわけで... 実際、InsuranceHotline の調査結果を見ると、夏生まれ (北米は9月から新学年) の人は事故率が一番低いグループです。逆に、オーストラリアの調査では、春生まれ (たしか1月から新学年) の人の事故率が一番低いようです。
はてブを見ると、端っから「ありえないこと」と決め付けている人もけっこういる様子。血液型性格診断程度には、検証する価値のあるデータだと思うが、いかがか?表をよく見ると、せっかちがまずダメで、1〜3月に生まれるとそういう性格になりやすいらしい。逆にのんびり過ぎるのも危ないというわけでワーストは10月の天秤座だが、5〜9月生まれは落ち着いた性格が運転にもよい方向に作用するのだそうだ。11・12・4月は中間で、順位も中間。
(中略)
ともあれ、反オカルトに凝り固まることがメディアリテラシーではないだろう、と思う。微妙な情報を鵜呑みにしないことは大切だが、よく考えずに間違いと決め付けるのではおっちょこちょいが裏返っただけではなかろうか。
というわけで,星座自体は交通事故率に影響を与えることはないとしても,星座によって交通事故率が異なる可能性はそれなりにあると言えます。
それはそうなんですが,じゃあ,この記事はどのくらい重要な記事なのか?
と考えていくと,どうなんでしょう? というのが主題です。
とりあえず,解釈自体はトンデモであったとしても,データの解析は統計学的に正確だったとしましょう。
(そうじゃないと話は面白くないですし)
まずは,この結果をそのまま日本に当てはめてよいのだろうかというのが一つ目の問題。
なぜなら日本と調査があった北米とでは,同じ月(or星座)が同じ意味を持つとは限らないからです。
もし早生まれの影響が実際にあるとして,日本と北米では学校へ入学する時期が異なります*1。
また社会の形態によって,影響の大きさも異なるかもしれません。
二つ目は統計学的な問題です*2。
すなわち,統計学的に意味がある違いであっても,実質的(実際的)に意味がある違いとは限らないのです。
データ数が多いほど“統計学的に意味がある差”が得られやすい*3
というのは統計学の基本の一つ(のよう)です。
元記事には
同社が集めた過去6年間の北米の交通データを基に、10万人のドライバーについて違反チケットの数や起こした事故の件数などを調べたところ
とあります。
10万ものデータがあれば,実際にはほんの少しの差であったとしても,「(統計学的に)意味がある差があった」という結論になってしまうのです。
元記事には具体的な数字がでてこないのが,実はミソであるのでは,などと考えてしまいますね*4。
ということで結論(?)。
- 保険会社にとっては
- 「(もしまだやっていないのなら)自分たちのデータを使って同様の解析をやってみる価値はある」
- 多くの人にとっては
- 「具体的なデータや手法とかが載ってないし,この記事じゃ議論にならない」
- 僕にとっては
- 「けっきょく人の記事に寄りかかって,ついつい時間をつぶしてしまった」
という意味がある記事だ ……ということで,どうでしょう?