篠田真由美『仮面の島』

イタリア人実業家の亡夫から相続した、小島の館に隠棲する日本人女性=レニエール夫人。彼女から鑑定の依頼を受けヴェネツィアを訪れた神代教授と京介だったが、跡を追った深春、蒼と合流そうそう島の売却を巡るトラブルに巻き込まれる。そして不可解な殺人事件が! 文庫版特典「蒼のヴェネツィア案内」も収録。 (講談社による内容紹介)

建築探偵シリーズ,久しぶりの文庫化です。
本シリーズの長編は文庫にならないと買わないので,そろそろ出るかと待っていました。


本当のことをいうと,あまりこれという感想はないんですけどね。
僕の勝手なイメージで言うと,鮎川賞出身の中堅作家による水準作。
読んでまあ面白かったし,また次作も読もうという気持にもなるんですけど...。


まず不満を言えば,建築探偵シリーズといいながら,あまり「建築」である意味がないなとか。
やっぱり建築をもっとミステリ部分に絡めてほしいですし。


トラベルミステリとしては,悪くはないなとか。
ヴェネツィアを舞台にしたことは,うまくストーリーに生かされているんですけどね。
少なくとも舞台が日本じゃ味気ないことこの上ない話になるだろうし。


登場人物のキャラクターが,ちょっと狙いすぎのような気もするなとか。
(まあ,それはこちらが男だからそう感じるってこともあるんだろうな。)


「女・I」「女・II」「女・III」といったモノローグの使い方はなかなかよかったです。
これは誰だろう?って考えすぎるとちょっと罠にはまります。
というか,「女・II」はけっきょく誰のモノローグだったのか,未だにわかってない。


最終章でのどんでん返しは想像の内と言えなくもありませんが,贋作についての事情とかは予想外でした。


前に読んだ短編集の『桜闇』とかはけっこう好きだったんで,次に期待。