島田荘司『暗闇坂の人喰いの木』

暗闇坂の人喰いの木 (講談社文庫)

暗闇坂の人喰いの木 (講談社文庫)

さらし首の名所暗闇坂にそそり立つ樹齢2千年の大楠。この巨木が次々に人間を呑み込んだ?近寄る人間たちを狂気に駆り立てる大楠の謎とはなにか?信じられぬ怪事件の数々に名探偵御手洗潔が挑戦する。だが真相に迫る御手洗も恐怖にふるえるほど、事件は凄惨をきわめた。本格の旗手が全力投球する傑作。(講談社による内容紹介)

スケールが壮大で,ミステリとしても面白くはあったんですけどね。
何か少しもの足りなかった。緊迫感かな?
内容紹介には「御手洗も恐怖にふるえる」とあるけれど,どうでしょう。
猟奇趣味的ではあったけれど,「恐怖にふるえる」という印象はあまりしません。
まあ,そういう人もいるよね,みたいな感じ。
凄惨は凄惨かもしれないけど。
横溝正史の『悪霊島』とかのほうが怖くないですか。
まあ,いろいろ変なの読んでると感覚が麻痺してくるのだろうから,
そういう意味ではこれは僕自身のほうの問題かも(笑)。
ホラー(因縁話)っぽさよりも,むしろユーモラスな印象のほうが強い気がします。


それから,そんなの調べたらわかるんじゃないかとか,誰も気が付かないはずがないのでは
とか思うところもいくつかありました。
伝説ゆえに近寄りがたかったということなんですが,こうまで重なると偶然すぎるような気がします。
ちょっと納得いかないなあ。
スコットランドの館の話はけっこう好きです。
変な伝説までついていて,これだけでも短編として面白いのでは。


明らかになった“奇跡”にさらに裏があったりすると,もっとよかったのにと思いますが,
贅沢の言いすぎでしょうかね。