平山瑞穂『ラス・マンチャス通信』

ラス・マンチャス通信

ラス・マンチャス通信

僕は常に正しく行動している。姉を犯そうとした「アレ」は始末されるべきだし、頭の足りない無礼なヤンキーが不幸になるのは当然だ。僕のせいではない。でも、なぜか人は僕を遠巻きにする。薄気味悪い虫を見るように―。カフカ+マルケス+?=正体不明の肌触りが、鈴木光司氏の絶賛を浴びた異形の成長小説。(出版社による内容紹介)

ダークというかグロテスク系ですねぇ。
久しぶりにこういった肌触りの小説を読んで,ちょっと興奮気味。


日本ファンタジーノベル大賞*1の受賞作ですが,まあ日本ホラー小説大賞のほうでもいいような。


ものすごく読んでいて不安定にさせる小説ですよね。
救いがありそうで救いがなさそうで...。
まあ基本的にはイヤーな話なんですけどね。最初から最後まで。


それでいて,ラストはちょっとせつなくなるぐらい,よい雰囲気だったもんだから。
一瞬,実は“感動の名作”だったんじゃないかと勘違いしてしまいました。


いや,ということは,やっぱり救いはあるのか。
主人公の成長の物語と言えなくもなさそうだし。


最初は,表紙のイラストのイメージもあって,何となく主人公は中高生ぐらいかなと思ってました。
言動とかも頼りない感じでしたからね。
けっきょく彼にどういう変化が生じたのか,よくわからないんですが。



なんだか気持の整理ができてないや。
 

*1:この賞から出た本は8冊ほど読みましたが,どれもみんな違うね。間口が広いというか。いわゆる“ファンタジー”はなくてもっと広い意味での“幻想”という言葉が似合います。
ちなみに今までに読んだのは『後宮小説』『楽園』『バルタザールの遍歴』『バガージマヌパナス』『鉄塔武蔵野線』『ムジカ・マキーナ』『世界の果ての庭』『太陽の塔