1月に読んだ本の感想(1)

忘れないうちに,何冊かまとめて。

畠中恵しゃばけ
米澤穂信愚者のエンドロール
酒見賢一墨攻
遠藤徹『姉飼』


晦日に読んだ佐藤友哉『子供たち怒る怒る怒る』については
こちらに修正・加筆。

畠中恵しゃばけ

しゃばけ しゃばけシリーズ 1 (新潮文庫)

しゃばけ しゃばけシリーズ 1 (新潮文庫)

江戸有数の薬種問屋の一粒種・一太郎は、めっぽう体が弱く外出もままならない。ところが目を盗んで出かけた夜に人殺しを目撃。以来、猟奇的殺人事件が続き、一太郎は家族同様の妖怪と解決に乗り出すことに。その矢先、犯人の刃が一太郎を襲う…。愉快で不思議な大江戸人情推理帖。日本ファンタジーノベル大賞優秀賞。

今年の最初に読む本(さすがに遠藤徹『姉飼』っていうのもちょっと……)。
表紙が楽しそうだったので。でも,よく読んでみると“人殺しを目撃…”って,推理物かよ。


前半はなんか少し読みにくくて気になったんですが,後半は○。
推理物といっても犯人も妖怪なんで,どういう妖怪が?ってとこが売りですかね。


で,時代考証的にはどうなんでしょう。はたして店の手代が主人の娘と結婚できたっけ?*1
まあ,本筋にも関係ないからいいけど。

米澤穂信愚者のエンドロール

愚者のエンドロール (角川文庫)

愚者のエンドロール (角川文庫)

文化祭の準備に追われる古典部のメンバーが、先輩から見せられた自主映画。その映画のラストでは、廃屋の鍵のかかった密室で少年が腕を切り落とされ死んでいた。誰が彼を殺したのか?その方法は?だが、全てが明かされぬまま映画は尻切れとんぼで終わっていた。さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリの傑作。

今回は連作ミステリではないんですね。
どちらかというと,バークリーの『毒入りチョコレート事件』タイプ。
前作よりもちょっと積極的に探偵役として働く主人公に出会えます。
なぜ? それも一つのポイントになっていますね。


けっこう複雑な構成になってはいるんですが,特に難解さも感じさせず。
相変わらずのシニカルな仕上がりですが,登場人物全員に対しての暖かみも感じられます。
で,最初と最後に出てくる先輩って,もちろん……。

酒見賢一墨攻

墨攻 (新潮文庫)

墨攻 (新潮文庫)

戦国時代の中国、特異な非攻の哲学を説き、まさに侵略されんとする国々を救援、その城を難攻不落と化す謎の墨子教団。その教団の俊英、革離が小国・梁の防衛に派遣された。迫り来る敵・趙の軍勢は2万。梁の手勢は数千しかなく、城主は色欲に耽り、守備は杜撰であった。果たして革離はたった一人で城を守り通せるのか。中島敦記念賞受賞作。

昔,森秀樹のマンガでも読みました(連載だったので一部だけど)。
原作の方は意外と薄い。
面白かったんですけど,ちょっと短かいのがもったいないと感じました。
いや,もしかしたらこのもったいなさまで狙っているのかも。
一種のあっけなさみたいな。


いずれにせよ短編1話分ぐらい読み足りない気持ち,どうしたらいいんだ。
はっ! そういえば,3巻目まで読んで放ってある『陋巷に在り』も読まないと。
こちらは全13巻と長いんだよね。

遠藤徹『姉飼』

姉飼 (角川ホラー文庫)

姉飼 (角川ホラー文庫)

さぞ、いい声で鳴くんだろうねぇ、君の姉は―。村の繁栄を祝う脂祭りの夜。小学生の僕は縁日で、からだを串刺しにされ、伸び放題の髪と爪を振り回しながら凶暴にうめき叫ぶ「姉」を見る。どうにかして、「姉」を手に入れたい…。僕は烈しい執着にとりつかれてゆく。日本ホラー小説大賞受賞作「姉飼」はじめ四篇を収録した、カルトホラーの怪作短篇集。

表題作は少しミステリー的(実は何々でしたパターン,バレバレだけど)。
記述による気持ち悪さよりも,そのさらに奥にある嫌な部分を狙っている感じですかね。
表面的なグロさなんかより,主人公と刑事のそれぞれ執着が,それ以上に陰にいる男たちの悪意とか,そちらの方ばかりが印象に残りました。


他の作品では「キューブガール」が面白かった。
ここに出てくる悪意の形も印象的。
語り口とかはそれほどよいとは思わなかったけれど,ネタとして。


「ジャングルジム」は,似たようなパターンの寓話ってたまにあるよね。
「妹の島」は書き出しからして面白そうだったのですが,盛り上がらずに終わっちゃった感じ。
なんかもったいない。
 

*1:基本的に店の従業員は例え番頭クラスでさえも一生結婚はできなかったはず。よほど大甘の親だったとしても,ちょっと難しいんじゃないかと。まあ,独立したと考えればいいのか。