『ぼくのメジャースプーン』『百万のマルコ』ほか

ぼくのメジャースプーン (講談社ノベルス)

ぼくのメジャースプーン (講談社ノベルス)

百万のマルコ (創元推理文庫)

百万のマルコ (創元推理文庫)

目覚めよと人魚は歌う (新潮文庫)

目覚めよと人魚は歌う (新潮文庫)

本格推理委員会 (角川文庫)

本格推理委員会 (角川文庫)

辻村深月『ぼくのメジャースプーン』

幼なじみの女の子を守ろうとする小学生の男の子ってシチュエーションが,佐藤友哉水没ピアノ』を思い出させましたが,内容的にはぜんぜん違ってて一安心(笑)。


特殊な能力をもった少年が,犯人(ウサギ殺し)に対し,その能力で何をしたいか? 復讐かそれとも... というのが主題で,なかなかよく考え込まれています。
ただ,そればっかり気を取られていると,作者の仕掛けにはまります。
とはいえ,後でわかってああよかった!だからいいんですが。


結局,彼の能力とはあったのかなかったのか?
どうとでもとれそう(たぶん)なのが面白いですね。*1


この作者の書く話って長いのが多いようなので,短いのも読んでみたいな。

柳広司『百万のマルコ』

マルコ・ポーロのほら話を楽しむ短編集。
ネタのレベル的にはアシモフの『黒後家蜘蛛の会』シリーズみたいな感じ。
まあ,いじわるクイズ系。


個人的には「賭博に負けなし」とか「雲の南」とかが好きですね。
端整な問題。
公務員試験の判断推理とかにも(形を変えて)出てきそうな問題ですね。
そういう意味では「山の老人」の答えはすぐわかりました。


なかなか楽しかった。
ラストではみんなアレですから,続編はないんでしょうね。
少し残念。

星野智幸『目覚めよと人魚は歌う』

そろそろ純文学系を,ということで三島賞受賞作。
昔の恋人との思い出に生きながら疑似家族を作って暮らす女性。*2
そこへ逃げ込んできた日系ペルー人の青年とその恋人。
特に盛り上がるわけでもなく,彼らがまた出ていくまでの数日間が語られます。


結局のところ,主人公(青年のほう)が自分を見つめ直す物語なのかな。
日系ペルー人ということで,居場所のなさを象徴しているとして。
などと解釈してもしょうがないか。
特に盛り上がる場面があるわけでもないのですが,なぜか心に残りました。
後半の,パーティで皆がサルサを踊る場面がよかったです。


どうでもいいけど,青年の恋人の名前は何だったんでしょうね?
「あな」って呼ばれてたけど,穴子?(なわけないって!)とかつい考えてしまった。
あっ,もしかして「あんな」の略だったのか?

日向まさみち『本格推理委員会』

いろいろ盛り込みすぎな印象。
主人公が抱えるトラウマ,複雑な人間関係とトリック。
終盤のどんでん返しの連続は,満足できるものだったし,意欲は買うけれど。


いまいち感情移入ができなかったのはしょうがないのかな。
やっぱ妹萌え妹萌えで来られてもね...。
僕の年代だと,妹(弟しかいないけど)っていっても,とっくにいい大人だしねw。
いや,ちょっと蛇足でした。
 

*1:条件がその人のしたいことだったら,ゲームは成立しないんですよね。それだと覚えていてもおかしくないのでは。

*2:出だしからこの人の変な幻想みたいなのが出てきて,さらに文章としても読みにくかったため,ずっとこの調子かよと思いましたが,後はそんなことなかった。