米澤穂信『氷菓』
- 作者: 米澤穂信,上杉久代,清水厚
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2001/10/28
- メディア: 文庫
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いつのまにか密室になった教室。毎週必ず借り出される本。あるはずの文集をないと言い張る少年。そして『氷菓』という題名の文集に秘められた三十三年前の真実―。何事にも積極的には関わろうとしない“省エネ”少年・折木奉太郎は、なりゆきで入部した古典部の仲間に依頼され、日常に潜む不思議な謎を次々と解き明かしていくことに。 (出版社による内容紹介)
『さよなら妖精』に予想以上に感動したので,同じ作者のデビュー作を。
いわゆる“日常の謎”系の連作ミステリだけど,でてくる謎は(全体を通しての謎も含めて)そっち系のミステリとしても小粒な印象。
なので,それほど強いインパクトはないのだが,それ自体は決して不満には感じなかった。
むしろ派手な謎に気をとられないためか,主人公たちの気持ちがわかりやすく伝わってくる気がする。*1
主人公の奉太郎は謎を解く才能があっても,それをあんまり発揮したくはないようで,それは『春季限定……』の主人公・小鳩君と共通しているけど,そういう自分が嫌いなわけでもないらしい。
両者の違いは,何かに積極的に関わることで嫌な目にあったか,嫌な目にあうのを予め避けているかの違いのようだ*2。
積極的には関わろうとしないけど,関わりたくないわけでもない(憧れる部分もある)という奉太郎の自己分析?は,僕自身もわりとそうだったので,わりと共感。
僕の場合は別に特殊な才能があるわけでもなく,だらだらと過ごしてきてしまったわけだけどw。
奉太郎の謎解きの才能を引き出す(作動させる)ため,本作では3人の個性ある友人達が登場する。
これがうまく役割分担されているので,なかなか興味深かった。
それは「六 栄光ある古典部の昔日」で典型的なのだけど,
常識人だったり,記憶力に優れていたり,知識力(雑知識)に優れていたり,互いに補い合うような形になっている。
何となく,RPGとかに出てくる“パーティ”みたいで,ちょっと面白い。
ある種の共同作業というのが,作者の一つのテーマになっているような気もする。
それにしても,最後の章が「サラエヴォへの手紙」だったりで,作者はよっぽどユーゴスラビアが好きなのか。
同士!? と思わないでもないが,
まあ,これは僕の勘違いかもしれない。