佐藤友哉『子供たち怒る怒る怒る』

子供たち怒る怒る怒る

子供たち怒る怒る怒る

過去の呪縛から逃れるため転校した神戸の小学校では、奇妙な遊びが流行っていた。「牛男」と呼ばれる猟奇連続殺人鬼の、次の犯行を予想しようというのだ。単なるお遊びだったはずのゲームは見る間にエスカレートし、子供たちも否応なく当事者となっていく―。テーマも、ジャンルも超越した、現代文学の最前線。


表題作を除く他の短編は全て読んであったのですが,最後の最後,大晦日になってやっと読了。
積ん読状態で取っておいた甲斐はあったかな。
純文学系の雑誌に書いても,佐藤友哉佐藤友哉ユヤタンユヤタン
ということで一安心とういか,あんまり区別ないですねぇ。


で,表題作なんだけど,横山さんはなんでああいう目にあったの?
それだけがちょっと納得いかない。


それから近親相姦ネタはあってもなくても,な気がするんですけど。
まあいいか。
それほど大きな問題でもなさそうだし(佐藤友哉にとってもそうなはずだと思うのだが)。
なんだかんだで,野坂昭如の『骨餓身峠死人葛』とかを連想。
ちょっとここらあたり,佐藤友哉って意外な面で古風なのかもって気もする。



短編では「欲望」がなんかすごいなあ。
カミュの『追放と王国』みたいな不条理の文学?
犠牲者の慌てふためきかたとか,さらりと酷い目にあったりの表現が佐藤友哉らしい。


「死体と」は,どっかで似たようなパターンの話を読んだぞと思ったら,山田風太郎の「首」*1
肌触りというか表面上の印象はだいぶ違うけど。


「大洪水の小さな家」は変わった小説だなと思った。
すごいかどうかは別として。
書き下ろしの2作もそれぞれ悪くはない。
それぞれ別種な希望の形。
 

*1:桜田門外の変で暗殺された大老井伊直弼の首がこっそり持ち去れれ,次から次へと持ち主が変わるたびに,あちこちの人生を狂わす。