『フリッカー式』『さよなら純菜…』ほか
久しぶりに読書感想。
フリッカー式 <鏡公彦にうってつけの殺人 > (講談社文庫)
- 作者: 佐藤友哉
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/03/15
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- 作者: 浦賀和宏
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- 作者: 池上永一,谷口広樹
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
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- 作者: 戸板康二
- 出版社/メーカー: 東京創元社
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佐藤友哉『フリッカー式』
ノベルスでは持っているんですが,文庫化されたのでそちらも購入。
笹井一個さんによる表紙イラストが好きだから*1とか,あとがきによると加筆があるらしいからとか,そんな理由。
それはそうと,文庫にするとけっこう厚いねえ。
薄い本だと思っていた。
出た当時はダメダメと言われていた(らしい)わりには,今読んでみて特に違和感(読みにくさ?)は感じられませんね。
元ネタがどうたらいうのは僕は元々よく知らないし。*2
妹云々とよく言われているが,そこらへんもどうでもいい。
佐藤友哉にとっても(他の話を読んでみても),それほど重要とは思えないのだけど。
この本だって基本的に,浩之(まあ公彦でもいいけど)と祁答院唯香との純愛話だし。
...と僕は思っている。
ちなみに加筆部分云々ですが,いちいち文庫版と照らし合わせて読んだわけでもないので,ほとんど気が付きませんでした。
本当にあるのか?
「さすがクラウザーさん」とか「ハルヒ」云々というのがそうなんだろうな,ぐらいはわかるけれど。
「霞刑部」は前からありましたっけ? でしたら山田風太郎ですねえ。
浦賀和宏『さよなら純菜 そして、不死の怪物』
八木剛士がとうとう目覚める!?
えーと,そんなんで……いいんですか?
最初の頃は,こういう展開になるとは思ってもみませんでした。
どういう結末をつける気なのか,予想が付かない。
作者の狙いは何なのか?
綺麗事ですます気はさらさらなさそうなので,まあ楽しみだけど。
あの本格ミステリ批判?あたりが後々効いてきたりするのかな。
主人公の八木剛士にはさほど同情もできないけど,さほど痛いとも思わなくなってきたのは,慣れてきたのかw。
わりとまともな気がしてきたぞ(最後のキレ方は除いて)...。
最後に出てくる新旧のインフォーマーって,いったい誰なんでしょうね。
新が坂本ハルで,旧が剛士の妹だったという説はどうでしょう。
池上永一『あたしのマブイ見ませんでしたか』
非沖縄ものを含む短編集です。
文庫化前のタイトルは『復活、へび女』(まあいい話だと思うけど,表題作とするのは?)。
ユーモア系の話とちょっとしんみりする系の話が半々ぐらい。
というか,各話ともに両要素が混じり合ってる。
収録作の中では「サトウキビの森」の情景がきれいですねえ。
動きの遅いオバァもいい味出してる。
「マブイの行方」「失踪する夜」はいつもの世界。
「カジマイ」はちょっとよくわからない。
意外によかったのが非沖縄もの。
「宗教新聞」(タイトルはちょっと...)とか。
ただ,誰が書いたのかすぐわかるような特徴が薄れた感じもするけれど。
「復活、へび女」「木になる花」の雰囲気もよし。
戸板康二『團十郎切腹事件』
中村雅楽短編全集の第1巻。
表題作の「團十郎切腹事件」その他で,第42回直木賞(昭和34年)を受賞したわけですが,この話自体はそれほどすごいとも思わなかった。*3
元々が劇評家で専業の推理作家でないからか,本巻でも後半になるほど(レベルが上がって?)面白くなる感じかな。
読み進めていくうちにだんだんはまってきた。
資料として小泉喜美子*4や江戸川乱歩による解説が収録されているのもいいです。
中村雅楽の名前の由来が雅楽頭(うたのかみ)から来てるというのは初めて知りました。
でも“うた”じゃなくて“がらく”なんですね。
*1:他の本とかまでコレクションするほどではありませんが。ノベルス版と違い文庫版だと目次ページにイラストがないのが残念。モノクロのもいいのに。
*2:だから『文学賞メッタ斬り!リターンズ』あたりで書かれていた「内輪言語だけで成立」とか「おたく的な記号が読者との接点」といった評はどうもピンとこない。浦賀和宏の「八木剛士」シリーズにマニアにしかわからないプログレネタが出てくるのと一緒じゃないの?
*3:当時の選評(by「直木賞の全て」)によると,選考委員の間にもそう言う意見はあったようですね
*4:歌舞伎+ミステリときたらやはりこの人。若くして亡くなられたのは残念ですね。エッセイ『優しく殺して』はよかった。